「Dead Hunter」


                     
 第3話


「フリーズ・ブリッド!」

 『パキッン!!』

「ハミル〜、私そろそろ限界だよ〜…ぐす…」

「こら!カーナ、そこで弱音を吐かない!!」

 そう言い放つとハミルはダギオンめがけて呪文を
 叩き込み続ける…

「うえぇ〜!」

 半泣き状態へ陥ってるカーナも次から次へと襲いかかる
 ダギオン相手に、ロング・ソードを振りかざす…
 カーナの前ではああ言ったものの…
 ハミル自身、魔法力の限界を感じていた…

「…まいったな…クリムのアホ、何してるのよぉ〜!…あぅ…」


 
 一方、魔法学院へとたどり着いたクリムは…
 学院長の部屋へ走っていた…

「はぁ…はぁ…が、学院長〜〜〜!!」

 『ガタン!』

 有無も言わさず院長室の扉を開け放ち、
 こちらも半泣き状態のクリムが院長の前に駆け寄って…

「院長!ハミルが、ハミルが〜!」

「…ハミル・ガーランドか〜?いや、懐かしい名前じゃの〜」

「えぇ♪私も懐かしくて〜…じゃなくて、ハミルが町で…」

「うむ…町で食い逃げでもやらかしたか…あの子は優等生だったが
 ど〜もぬけてる所が有ったからのぉ〜ふぉふぉ。」

「確かに、そい言う所が有りましたわねぇ〜…って、ちがぁ〜う!」

 クリムの顔に青筋が浮かぶ……

「…いや…そんな怒らんでも…」

 さすがにこの顔には院長もたじろいだ様だ…

「そうじゃなくて、町にダギオンが!」

「なに!…ハミルのやつ…いつの間にダギオン使いに…」

 …クリムは静かに呪文の詠唱に入った…

「…天地の境、迷宮の覇者…古の盟約に従い、我ここの誓わん…」

「待て!…ちょっと待て!わ、わしが悪かった!」

 慌ててクリムの詠唱にちゃちゃを入れる院長…

「…私の話…聞いていただけます…?」

 ジト目で詰め寄るクリム…

「聞く!いや、聞かせてください!…ついでにガンドの店の
 ソフト・クリームも付ける!」

「……いりません!」

 目を伏せ、額に青筋を立てながら目尻をヒクヒクさせるクリム…
 …一瞬の間は、『ソフト・クリーム』と言う言葉に心がぐらついた…
 などと、口が裂けても人には言えないクリムであった…

「で、…町がどうしたと言うのだ?」

 院長の問いに我に返ったクリム…

「そ、そうだ!町にダギオンの群が…今、ハミルが戦ってます!」

「な!…ダギオンが群れでじゃと!いかん!」

 そう言うと院長は、水晶で出来た魔法球を取り出し…

「アッサード!…聞こえるか!?」

 院長の言葉に反応するかの様に…水晶玉に、
 魔法学院実技指導教官長のアッサード・フォルテの顔が
 写し出された…

「は!院長、」

「準備の方はどうなっておる、一刻の猶予も無いぞ!
 町にダギオンの群が現れたそうじゃ!」

「ダ、ダギオンの群ですと!…くっ…こちらは今しばらく準備にかかって
 しまいますぞ!」

 院長は渋い顔をしながら言い放つ…

「…仕方がない、出られる者から随時出す様に!…わしも出る!」

「は!かしこまりました!」

 そう言うと、アッサードの顔は魔法球から消えた…
 学院長はゆっくりと立ち上がり、言い放つ…

「…クリム君、行こうか」

「はい、院長!」

 二人は院長室を出、魔法学院正門へと続く大廊下に向かった…
 と…そこへ、何やらくら〜い顔をして…

「はぁ…私ってダメなんだわぁ…みんな戦いの準備に大忙しなのに…
 私には教官達も全然声かけてくれないし…こないだの実技試験も落っこちた
 しなぁ〜…あぁ〜私って才能無いんだわきっと…うぅ…」

 などとぶつぶつ言いながらトボトボと歩く少女が一人…
 ふと顔を上げると…クリムと院長が何やら忙しそうに歩いている…

「…あんなに慌ててどうしたんだろ?」

 不思議に思い、思わずこえをかける少女…

「あのぉ〜!クリム教官!どうしたんですかぁ〜?」




 聞き慣れた声に、一瞬『ビクッ!』としたクリムだが…
 冷や汗混じりの引きつった笑顔で振り返る…

「ティ…ティア、どうしたの?こんな朝はやく…はは」

 ティアと呼ばれる少女は、きょとん…と首をかしげ、
 もう一度問いかけた…

「…どうしたのか聞きたいのは私のほうですよぉ〜…みんなダギオン狩りの準備で
 口も聞いてくれないんですよぉ〜?…私一人のけ者見たいで…ぐす…」

 半泣き状態でティアは鼻をならす…
 今は一大事…とは言え、クリムも教師のはしくれ…
 ここでティアを無視するのには抵抗が有った…が、
 院長の言葉に我に返った…

「クリム君、急ぐぞ!…ハミル君達が心配だ…」

「はっ!…そうだ、はい!今行きます!」

 そう返事を返すと、クリムはティアの方を向き、
 子供に言い聞かせる様に言った…

「今ね、町がダギオンに襲われて大変なの…私の友達が待ってるから、もう行くね」

 そう言うと同時にクリムは振り向き、院長の後を追った…
 一人取り残されたティアは…

「…ハミル……ハミル・ガーランドが町に来てるの?…あの学院始まって以来の
 天才と言われた…あの…でも、どうして学院辞めちゃったんだろ…あの人
 ……会って見たい…会って話しがしてみたい……」



「…ふぁ…ふぁ〜くしょん!…づづ…風邪かな?」

「ハミル〜〜〜〜!、援軍まだぁ〜〜〜?…うぐ…えっぐ…」

 もう完全に泣きに入っているカーナが叫ぶ…

「あたしに聞かないでよ!…って、ファイアーボール!!」

『ドカッ!!…フシュ〜〜……』

「…まったくクリムのやつ…昔からもたもたするところが有るのよねぇ〜…」

「ハミル〜〜〜!!」

「何よ!」

「…お腹減った〜〜〜〜〜!ぐす…」

「……知るかぁぁぁぁぁ!!…サンダー・ボルト!!!」

『ガガガガガガガガガガガッ!!』

 …こうして、疲労と空腹の戦いは続くのであった……



                                          続く!

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